研究調査

research study

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コミュニティの役割に着目した交通まちづくりにおける意思決定に関する研究

プロジェクトリーダー:久保田 尚
年度:2004年, プロジェクトナンバー:H634

背景と目的

交通まちづくりにおいては、地元コミュニティの役割がきわめて重要であることはいうまでもない。ここ数年、ワークショップ等の形で住民等が計画作りに関与する事例も多くなっている。しかしながら、住民参加あるいは住民発意による計画を行政計画として成熟させ、社会的意思決定に至るまでの道筋は、わが国ではほとんど不明確といってよい。
本研究は、地区交通改善を初めとする交通まちづくりを対象として、サイレントマジョリティなど市民の多様性を考慮しつつ、また、社会実験等の具体的ツールに着目しつつ、実践的な検討を踏まえながら、意思決定のあり方や方法論について、コミュニティの役割に着目しつつ検討するものである。

期待される成果

(1) 交通まちづくりにおける「決定」に関する状況把握と類型化
 交通まちづくり計画を「決定」する手続きは、施策内容によって、また国や地域の状況によって大きく異なる。ここでは、主に日本の場合について、いくつかの施策タイプ(地区交通改善、トランジットモール、駐輪対策など)ごとに、決定手続きに関する法制度の把握、事例分析、および課題整理を行う。
(2)地区交通改善に関する海外状況の把握
 交通まちづくりの中で、コミュニティの意思決定が大きな意味をもつ地区交通改善について、欧米の事例調査を行う。この点については、「一定地域住民を対象とする小規模な住民投票によりハンプ導入の是非を決定するアメリカの例」などの事例を把握しており、その実態や課題を詳細に調査・分析する。
(3)地区交通改善計画の策定プロセスにおけるコミュニティの意思決定およびそのオーソライズに関する事例研究―台東区谷中
 ※2003年度から地区交通改善案をワークショップ形式で作成している谷中地区が、コミュニティ内での意見集約を行う段階を迎えている。その内容が行政計画としてオーソライズされるかどうか現段階では全く不透明だが、本研究の中でその動きをリアルタイムでフォローするとともに、次の点の研究を行う。
1)コミュニティ内での意見集約と行政オーソライズとの関係を踏まえたプロセス論の提示
 事例地区での実践例を踏まえ、住民発意による改善案をオーソライズするための要件や課題をまとめる。
2)ワークショップ対応型シミュレータの活用
 ワークショップ用に開発済みの対話型シミュレータを、行政を含めたオーソライズ過程で活用するための要件や課題を整理する。
3)サイレントマジョリティと意思決定についての分析
 社会的意思決定にあたっては、サイレントマジョリティの意向を極力くみ上げるとともに、その位置づけを明確化する必要がある。本研究においては、2003年度に実施した「交通問題一般に関する質問票調査」の続編として、具体的計画案を示した上で賛否等を聞く「計画代替案評価に関する質問票調査」を実施し、両調査データを用いたパネル分析を通して、①サイレントマジョリティの行動・意向変化(1回目調査で無回答の人が2回目調査では具体的提案に対して反対を表明する、など)の分析、②サイレントマジョリティとそれ以外の意識比較、などを実施し、サイレントマジョリティの意識構造を分析するとともに、意思決定における位置づけについて検討する。
4)意思決定支援ツールの検討
 ハンプ等の意思決定支援ツールの社会実験を実施し、住民特にサイレントマジョリティへの効果を分析する。
(4)市民参画型交通改善のための方法論の構築
 上記の検討に加え、内外の事例を参考にしつつ、わが国に適した市民参加の方法論、とりわけ積極的参画を促すための方法論を整理する。

成果物

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