research study
≪社会貢献≫インクルーシブサイクリングの手引きを活用した障がい者自転車教育プログラムの地域展開
背景と目的
1609プロジェクトでは、1年目に自転車を中心とした障がい者モビリティとその関連教育制度について調査し、2年目には小学生低学年を対象としたこども向け自転車教室の開催を通じて、幼少期における自転車教育のあり方とその具体的なプログラムの考え方を整理した。3年目には、プログラムの考え方を障がい児に適用し、自転車教育の現状と課題について、日英蘭の専門家を交えて国際ワークショップを愛媛で開催し、自転車教育のあり方について情報共有を図った。
この3年間のプロジェクトを通じて、自転車交通とその教育に関わる様々な課題とその対応策について、常に実践を通じた議論を積み重ねてきた結果、いくつかの自治体では、本プロジェクトを参考に、幼児向け自転車教育プログラムとして施策に採用し始めるなど(例えば京都市、静岡市など)、具体的な展開事例もでてきている。また、プロジェクトの主要な成果としては、様々な地域において同様のプログラム展開を支援できるように、海外事例や先進的な研究成果も取り入れた、障がい児向け自転車教育の実践手引き(案)としてとりまとめる予定である。
こうした背景を踏まえ、本社会貢献プロジェクトでは、手引きを用いた自転車プログラムを国内において試行展開し、社会実装に向けた課題の整理と手引きの改良・アップグレード(国際版)を目的とする。この手引き改良のために、次の2つを行う。
(1)英・蘭で類似ワークショップを実践しているNGOグループとプロジェクト活動成果をシェアし、手引きの内容に関してさらなるフィードバックを得るために、英国で国際ミニシンポジウムを開催する。
(2)国内において、手引きを活用した教育プログラムを試行展開し、課題を整理するとともに手引きの改良・充実を図る。
国内では、オリンピック・ラリンピックの開催を控え、タンデム自転車の走行可能な都道府県が増えつつあり、こういった障がい者向けの自転車教育プログラムとして社会に還元してくことは、時宜を得ているとともに公益に資すると考えている。
期待される成果
本プロジェクトで期待される成果は、以下の2点である。
・障がい者の自転車利用に関しては、実際には障がいのない人たちの誤解などが関与していることから、こういった社会実装を具体的に試行展開することで、これらの誤解を解くきっかけになることが期待される。
・障がい者向けの自転車プログラムの手引きの国内/国際版を日本から情報発信することで、国内向けには、公安委員会などが実施するタンデム自転車関連の規則改正に伴って、地域の教育コンテンツとして活用されることが期待される。また、専門家で議論した内容を踏まえて、自転車が障がい者のモビリティの選択肢になり得ること、その技能習得と安全利用に向けたトレーニング手法を提示することで、国際的に立ち後れている状況を改善することが期待される。