研究調査

research study

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タイにおける交通安全施策への支援

プロジェクトリーダー:福田 敦
年度:2005年, プロジェクトナンバー:H749

背景と目的

開発途上国では、急速にモータリゼーションが進展する一方で、道路や交通信号などの交通施設の整備、免許制度の確立、交通安全教育の実施などが遅れているため交通事故が急増しており、大きな社会問題となっている。特に、ASEAN 諸国では、乗用車だけでなくートバイが急増しており、域内の交通事故による死亡者数は 2003 年の時点で 4 万 5 千人に達しており、今後もモータリゼーションの進展が続いた場合、この数字は更に増加し大変深刻な問題となることが予想されるため、早急に抜本的な対策を立てることが必要となっている。
ASEAN 諸国中でも最もモータリゼーションが進展している国の一つであるタイでは交通事故による死亡者数が 1 万 4 千人に達しており、日本と人口当りの交通事故死亡者数で比較した場合、実に 2。5 倍以上という大変高い状況にあり、交通事故死亡者数の削減が大きな社会的課題となっている。そこでタイ政府は、2004 年には省庁横断的な組織を設置し、交通安全アクションプランも策定したが、必ずしも交通事故死亡者の削減には結びついていないのが現状である。
このような状況に対して、タイでオートバイの製造、販売をしている A。P。 Honda では、これまでも安全運転講習の普及、ヘルメットの無料配布など様々な取り組みを行ってきたが、今回タイ政府が策定した交通安全アクションプランの実効性を挙げることが非常に重要と考え、日本の経験を生かしながら支援出来ることを探ることとし、(財)国際交通安全学会に対して調査研究を推進することを依頼したため、同学会から研究代表者に対して調査が受託された。
 本調査研究は、上記のような背景の下で、タイ政府が立案した道路安全アクションプランの内容を検討し、その結果、交通事故の発生原因、発生箇所を適切に把握して、効率的に対策を立てる上で鍵となる交通事故データの整備が進んでおらず、今後その整備に時間が掛かる点が交通安全を推進する上で大きな障害となると判断し、これを早急に補完、代替する観点からヒヤリハットデータを収集、活用することを提案し、その可能性について実証的に検証することを目的とするものである。具体的には、タイの典型的な地方都市で交通事故が急増しているウドンタニ市と首都バンコクの郊外に位置するサマットプラカン県の中心部の 2 つの地域で、ヒヤリハットデータを収集するためのワークショップやアンケート調査を実施し、ヒヤリ地図の作成を行うとともに、そこからどのようなデータが得られるかを分析する。ヒヤリ地図は決して客観的な情報ではないが、その有効性についてはこれまで受託者である(財)国際交通安全学会によって実施されてきた複数の研究プロジェクトによって立証されており、この調査研究ではこれらの(財)国際交通安全学会にって蓄積されてきた技術と知見を移転することも大きな目的の一つとする。

成果物

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