research study
高齢ドライバーのリスクテイキング行動の研究
背景と目的
本研究の研究目的の第一は、高齢者と他の年齢層のドライバーを比較することである。前年度の研究では、テストバッテリーの構築を行なったために調査対象者の数も少なく、年齢別の比較ができなかった。今年度の研究では、高齢者を前期高齢者(65歳から75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)に分けるとともに、中年層(55歳未満)と準高齢者(55歳から65歳未満)の年齢翔を調査対象者に加えることで、年齢効果についてより明確に比較検討できる。
研究目的の第二は、高齢者のハザード知覚からリスクティキング行動やリスク回避行動までの過程の、どこに問題が生じているのかを推定することである。そのために、指標間の関連性を調べると同時に、明らかに問題となる特異行動(インシデント)を起こした調査対象者について、指標の表れ方をCERADや面接調査結果を含めて検討した。
第三の研究目的は、運転パフォーマンスに著しい低下や特異行動を示す高齢ドライバーをいくつかに類型化し、彼らに対する教育・指導プログラムを開発することであった。この目的に関しては今年度での研究段階では未検討なままに残されており、今後の課顆である。
期待される成果
本研究では、高齢者のリスクティキングおよびリスク回避に関わる語側面を、I)ハザード知覚テスト、2) リスク評価テスト、3) 一般的運転技能の自己評価表と指導員評価表、4) 運転パフォーマンス実験、5) 指導員による運転評価、6) 痴呆症診断検査(CERAD)、7) 面接調査、という多元的な手法を用いて測定した。
ハザード知覚能力は、実際の交通状況をビデオで撮影した映像に対する回答により測定した。被験者は映像を見た後、場面別にハザードを特定した。さらに、自分の運転能力の評価や自信度は、まず、自分が同じ年齢の他のドライバーと比べてうまいかどうかについて評定させることで調べた。異なる運転状況への自信度についても、Marottoli & Richardson (I 998) や過去の研究に基づいて質問を行った。個人の運転パフォーマンスは、高齢ドライバーを実際の教習所内コースで実走行させることで評価した。一般的運転技能評価についても、同じ質問表を用いて、自己評価と指導員評価という形式で調査の一番最初に自己評価、最後に指導員評価という順序で実施した。
さらに実施可能な場合には、痴呆症診断検査CERADを実施した。