研究調査

research study

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二輪車文化を活かし安全を基本としたASEAN地域の持続可能な交通まちづくりの提案

プロジェクトリーダー:土井 健司
年度:2020年, プロジェクトナンバー:2041C

背景と目的

1年目の平成30年度は、交通死亡事故が多発するタイを対象に、事故 データの収集、事故発生状況の空間的な可視化、現地で着用されている ヘルメットの安全性の検証および自動二輪から公共交通やパラトランジット への利用転換を促すための MaaS アプリの開発などを実施した。 2年目の令和元年度は、タイ、ベトナムにおいて自動二輪の交通事故実 態および交通安全教育の実施状況の把握を行った。両国では交通事故に 関する統計の整備が十分でなく、自動二輪に関する事故実態の把握が困 難であることを再確認した。他方、最大の自動二輪マーケットシェアを占める Honda(A。P。Honda および Vietnam Honda)が中心となりクロスセ クター連携による交通安全教育/普及活動を実施していること、および取り 組みの事故削減への貢献を確認した。特に、タイの A。P。Honda は販売店 と協力した教育、啓発活動の全国的な展開、および運転技能、危険予測 能力等の多様なプログラムの開発を行ったこと、また Vietnam Honda は 多様な政府機関の支援のもと若者・こどもを中心とした交通安全教育を全 国的に実施し、交通事故の減少に貢献したことを確認した。加えて、令和 2年度に実施予定のビデオモニタリングの実施体制の構築を進め、現地協 力者と自動二輪の事故リスクが高いと考えられる調査対象地点の選定を行 った。 これらの成果を踏まえて、3年目の令和2年度は交通安全に関する政府 のリソース不足に直面する ASEAN 地域での、政府に過度に依存しない 民間事業者が中心とな った交通の安全性向上のための取り組みを、一つ のクロスセクター連携モデルとして構築し、その有効性を検証することを目的 とする。

期待される成果

本プロジェクトは、まず多額の費用や人的リソースを要する交通事故統計の 収集に代わる交通事故の実態把握方法としてビデオモニタリングを用いた簡 便な交通事故リスク調査および分析手法の構築を行う。また、実態把握お よび交通心理学などの既往の知見に基づいた危険予測に必要な他者視 点の取得のためのトレーニングや教育方法の開発およびプログラムの改善の 枠組みの検討を行う。特に、将来の安全を担う子どもへの教育に関しては、 モニタリングにより把握した地域特性および子どもの発達に応じて、段階的に 細分化された教育プログラムの検討を行う。加えて、運転者が交通弱者 (子どもや高齢者、歩行者等)の行動特性を理解し、その視点を獲得す るための教育を構成する。最後に、こうした交通安全推進活動に対する社 会的インパクトの定量的な評価およびその手法構築を行うものである。 以上のように本プロジェクトでは、実態調査、分析、教育の実施、効果検証 までの一連のプロセスを利害関係者との共創に組み込む「参加型の交通安 全文化を支援するメタデザイン」=“Honda モデル”の構築とその有効性の 訴求に主眼があり、このモデルは、ASEAN 地域をはじめ二輪利用に関わ る安全上の問題を抱える多くの国・地域へ展開されることが期待される。加 えて、このモデルの社会的インパクトの評価結果を社会へ還元することによる 多様な主体のエンゲージメント拡大が期待される。

成果物

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