研究調査

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≪国際連携≫二輪車文化を活かし,安全を基本としたASEAN地域の持続可能な交通まちづくりの提案

プロジェクトリーダー:土井 健司
年度:2018年, プロジェクトナンバー:1841

背景と目的

本提案は。発足時より IATSSからの寄付金によって運営を支えられ、H29年度から新たに受託研究のフェーズへと移行したATRANS(Asian Transportation Research Society)。の将来的な自立化、およびATRANSを拠点に対ASEAN連携を推進するためのプロジェクトである。タイ・バンコクに拠点を置くATRANSは、長年の学会活動を通じてタイ国内外の官・学に一定の影響力を持つに至っているが、理想的な交通社会の実現に向けた問題解決能力は未だ不十分な状況にある。このことは、ATRANSの従来の研究調査活動が学会構成員の個々人の研究の延長上にあることが多く、学会の組織力を活かせていないこと、および長期的な戦略性を欠いていることに起因している。また、こうした問題は学会の自立的なファンディングへの障害ともなっている。
上記の背景の下に、本プロジェクトは、当面はATRANS側による受託研究(IATSS側からは受託研究)を見守り支援しながら、それを補完する形で、自立化への道筋づくりに貢献しうる長期的研究テーマ「二輪車文化を活かし、安全を基本としたASEAN地域の持続可能な交通まちづくりの提案」を実施するものである。二輪交通の安全性はASEAN共通課題でもあり、タイを対象とした取り組みを皮切りに他国への水平展開が可能と期待される。なお、国内メンバーには持続可能な交通や安全を基本とした交通まちづくりの専門家は多いものの、二輪交通の専門家が不足していることから、ASEAN地域の模範となる二輪車文化を醸成している台湾の研究者・専門家をメンバーに加え、日・泰・台に跨る三か国連携プロジェクトとして開始したいと考えている。

期待される成果

経済成長の著しいASEAN地域において過度にマイカーに依存しない持続可能な交通まちづくりを推進するためには、公共交通のみならずパラトランジットや二輪交通の安全性を改善した上で、都市交通体系に積極的に組み込んでいくことが望まれる。そのことによって、都市の持続性を脅かす低密な市街地の拡大を抑制することができ、人々の生活の質の向上にも寄与するものと思われる。今日においても、バイクタクシーは人々のラストマイル交通(端末の交通手段)として重要な役割を果たしているが、安全上の懸念が極めて大きい。
本プロジェクトは、二輪車文化模範国の台湾の経験を活かしつつ、タイをはじめとするASEAN地域の固有の地域文化にも根差した安全で持続可能な交通まちづくりのモデルとその実現方策を検討するものであり、国際貢献に資するところが大きい。
また、我が国においても超小型モビリティの普及が模索される中、二輪車(EV)という最もコンパクトで機動的な車両を道路空間や都市空間にどのように位置づけ活用するかが重要な課題となりうる。そうした議論に先んじて、本プロジェクトでは「二輪文化を活かし安全を基本とした持続可能な交通まちづくり」の実現に関わる諸課題の洗い出すことにより、我が国での先進的なマイクロモビリティ・システムの構築にも貢献しうると期待される。
さらに、上記のような実際性および先見性の高い取り組みにより、ATRANSに対する産業界および政府の認知度・レピュテーションを高めることができれば、タイ国内外の産官からの委託研究を受ける機会が増し、財政基盤の強化および運営の自立化に資すると期待される。

成果物

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