研究調査

research study

Share
facebookxhatenapocket

歩行者の道路横断実態を重視した実用的な最適信号制御の研究

プロジェクトリーダー:赤羽 弘和
年度:2007年, プロジェクトナンバー:H963

背景と目的

現行法制度において、横断歩行者の信号制御における青・青点滅表示は、車両に対する青・全赤表示に相当する。しかし、青点滅時間が短いために、横断歩行者の信号遵守率や左折車との錯綜の発生等に影響している可能性があるとの指摘がある。また、欧米では多用されている歩行者の二段階横断(中央分離帯の前後では異なる信号表示で横断する方式)が日本ではほとんど適用されておらず、車両を含む信号制御全体の自由度を低下させ、端的には信号サイクル長の無用な長大化を招き、交通渋滞による有害物質の排出量の増大が沿道環境にも影響しているとの指摘もある。
本プロジェクトの平成18年度の研究においては、前年度に引き続き、横断歩行者に横断時間の残余を伝達することができる「経過時間表示機能付き歩行者用LED灯器」を横断長13m~38mの横断歩道4カ所に実験的に設置し、歩行者が各自の横断速度に合わせて横断開始の可否を判断できるようにし、結果として赤表示までに横断を終了できる割合を向上させる効果を、アンケートと延べ約16、000横断者の歩行速度や横断開始・終了時刻等のビデオ観測により検証した。その結果として、歩行者の主観的評価は概ね肯定的であるが、実際に横断挙動の変更にまで結びつけるには歩行者により安全な横断を動機付けするための広報活動等が重要であることが示唆された。また、歩行者の二段階横断に関しては、我が国へのより広範囲な導入に向け、概略的にではあるがケーススタディーを実施し、同横断方式の得失や技術的課題を検討し、実験実施のための要件を整理した。
平成18年度においては、視覚障害者の横断支援の目的で設置されている音響装置が、一般歩行者の挙動にも影響を及ぼしているとの定性的観測結果を、社会実験により定量的に検証することを目指す。すなわち、横断開始が安全な時間帯とそれ以降の時間帯とを音響的に区分する装置を企画・設置し、横断歩行者の心理に直接働きかけることによる横断開始時期等への効果を実地で確認するものである。また、歩行者の二段階横断のより広範囲な導入に向け、適用候補交差点を抽出し、道路構造や交通状況の調査結果に基づいて、二段階横断の社会実験の企画と事前評価を実施する。

期待される成果

① 横断支援音響装置の企画・改造
視覚障害者用の横断支援音響装置を改造することにより、横断開始が安全な時間帯とそれ以降の時間帯とを音響的に区分できるようにする。また、必要に応じて、仮想現実空間装置によるシミュレーションにより、当該音響装置の設定調整を実施する。
② 横断支援音響装置の効果の社会実験による定量的評価
横断支援音響装置を実際の横断歩道に設置し、歩行者の横断開始時期、横断速度、歩行者赤開始時の横断未了状況等を実地観測し、横断の安全性向上効果を定量的に評価する。また、歩行者に対するアンケートを実施し、主観的評価の状況を分析する。
③ 二段階横断方式の導入検討
平成18年度に検討した二段階横断方式の得失に基づき、同方式の導入に適した横断歩道を具体的に選定し、幾何構造、交通状況等を実地調査する。その結果に基づき、同方式の具体的な導入計画を立案し、交通シミュレーション等により導入効果を事前評価する。さらに、事前評価結果の活用も含めて、合意形成の過程を検討する。

成果物

同テーマの研究調査

一覧へ戻る