研究調査

research study

Share
facebookxhatenapocket

歩行者の道路横断実態を重視した実用的な最適信号制御の研究

プロジェクトリーダー:赤羽 弘和
年度:2006年, プロジェクトナンバー:H856

背景と目的

  現行法制度において、横断歩行者の信号制御における青・青点滅表示は、車両に対する青・全赤表示に相当する。しかし、青点滅時間が短いために、横断歩行者の信号遵守率や左折車との錯綜の発生等に影響している可能性があるとの指摘がある。このため、歩行者用青点滅表示を長くして、欧米等で既に実施しているように車両の全赤表示と等価の位置づけにすべきとの考え方も一部にある。一方で、歩行者の横断速度のばらつきのために、従来の一律な歩行者用表示では安全性と横断機会をともに増大させることは困難である。また、欧米では多用されている歩行者の二段階横断(中央分離帯の前後では異なる信号表示で横断する方式)が日本ではほとんど適用されておらず、車両を含む信号制御全体の自由度を低下させ、端的には信号サイクル長の無用な長大化を招き、交通渋滞による排出量の増大が沿道環境にも影響しているとの指摘もある。
本プロジェクトの平成17年度の研究では、横断歩行者に横断時間の残余を伝達することができる「経過時間表示機能付き歩行者用LED灯器」を横断歩道数カ所に実験的に設置し、歩行者が各自の横断速度に合わせて横断開始の可否を判断できるようにし、結果として赤表示までに横断を終了できる割合を向上させる効果を検証した。その結果として、横断終了率を数%のオーダーで改善できること、および歩行者の主観的評価も概ね肯定的であることを確認した。
平成18年度においては、「経過時間表示LED灯器」に関して、横断長と効果の関係の把握、広報活動の企画・実施と効果評価、横断歩行者の挙動の経時変化の評価、歩行者青・青点滅表示の最適化、交差点における交通処理能力向上と損失時間減少の評価を実施する。また、我が国における歩行者の二段階横断のより広範囲な導入に向け、横断歩道の幾何構造も含めて信号制御を包括的に検討する。

期待される成果

① 残り時間表示方式の効果評価(継続)
「経過時間表示LED灯器」の既設横断歩道で効果の経年変動を評価する。また、平成17年度の評価に基づいて設置効果が高いと期待される道路区間を追加選定して当該装置を集中設置し、横断長と効果の関係の把握、広報活動の企画・実施と効果評価、横断歩行者の挙動の経時変化の評価、残り時間表示を前提とした歩行者青・青点滅表示の最適化の考え方の整理を行う。
② 残り時間表示方式の車両制御への効果評価
左折車と横断歩行者の錯綜の減少による交通処理能力の向上効果を評価する。
③ 残り時間表示方式の計算機シミュレーションによる評価
歩行者および車両が信号制御により被る遅れの減少効果を、個別の交差点および路線上に隣接する複数交差点に関して信号制御を最適化し、計算機シミュレーションで評価する。
④ 二段階横断方式の導入検討
横断歩道の幾何構造も含めて信号制御を包括的に検討する。

成果物

同テーマの研究調査

一覧へ戻る