研究調査

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安全でエコなラウンドアバウトの実用展開に関する研究

プロジェクトリーダー:中村 英樹
年度:2011年, プロジェクトナンバー:H2303

背景と目的

信号交差点、無信号交差点を問わず、平面交差部においては出会い頭や右折対直進などの交通事故が後を絶たない。また、従来日本の無信号交差点における安全対策は、主として信号機の設置が主要な施策であったが、たとえ信号機を設置しても信号切り替わり時や信号無視の事故が生じ、根本的な対策とならない場合が多いだけでなく、交通量の少ない平面交差部において信号機を設置することは、大幅な遅れや環境負荷をもたらしている。このような問題点に対して、欧米諸国では近年ラウンドアバウトを積極的に導入し、安全で損失が少なく、かつコストのかからない平面交差部を実現している。しかしながら、日本ではラウンドアバウトの特徴や性能に関する認知度が低いことや説得力のある日本での実データの蓄積不足から、実務においての実用化へのハードルは依然高い状況にある。そこで本研究では、日本でのラウンドアバウトの実用展開のための戦略となるロードマップを作成し、行政機関と連携して実道実験を行うことを目指す。そして、これよりラウンドアバウト導入に伴う様々な実データを収集することで、上記のような障害を一つずつ克服し、本格導入のための環境を整えることを目的とする。

期待される成果

 初年度であるH21年度は、実道実験に向けて、次の項目について実施した:
1。 ラウンドアバウトの適用条件の整理(H21)
適用条件を整理するとともに、日本に現存するラウンドアバウトをサーベイし、120箇所程度をリストアップした。行政側からの適用上の課題についても整理した。また、ドイツの専門家によるシンポジウムを東京と札幌で開催し、多数の参加者を得た。
2。 試験場内へのラウンドアバウト設置による利用者挙動データの分析(H21)
寒地土木研究所苫小牧試験場構内に模擬的なラウンドアバウトを設置し、流入部などの幾何構造や路面標示、標識等に応じた利用者挙動のデータを収集した。安全性や効率性に関する分析を行うことで、構造上や運用上の貴重な知見を得ることができた。
3。 改良候補交差点の選定と設計(H21)
長野県飯田市、秋田県、北海道などの地方部において、ラウンドアバウト化の意義のある交差点を抽出し、行政実務担当者と綿密に意見交換を行うことで、現場のラウンドアバウト化の検討を行った。特に飯田市においては、行政担当者とともに改良試設計と交通運用方法の検討を行い、住民説明会も開催して好感触を得たが、最終的には時間的制約から実現に至らなかった。
上記のように、行政担当者や市民との地道な意見交換を通じて、実道への適用の機運は着実に高まりつつあり、あと一歩のところまで来ているが、関係者や市民に正しい認知を広めて実道展開を加速するためには、継続的な活動の時間が必要である。また、昨年度の警察関係者との情報交換や協力は極めて有意義であったが、これはIATSS研究プロジェクトだからこそ可能であった。H22年度はこの機運・環境を絶やすことなく最大限に活かし、次の活動を精力的に行うことを中心とする:
4。 地域ワークショップの開催(H22)
 地域行政、市民、利用者等への認知促進活動として、全国の地方部数都市で対話型のワークショップを開催して理解を深めるとともに、意見交換を通じて問題点を洗い出し、克服してゆく。
5。 実道実験交差点の選定と社会実験(H22)
 行政との綿密な意見交換や上記ワークショップを通して、実道実験の候補となる交差点を抽出し、改良計画立案と設計を行う。本格改良前に実道上で短期間の社会実験を行い、データ収集・分析する。また、次年度の実道への導入に向けて、改良予算確保のために必要な作業を行う。
6。 ラウンドアバウトの実道改良実験(最終年度)
 行政機関と協力してラウンドアバウトへの実改良を施し、データを収集する。
7。 ラウンドアバウトの本格導入プログラムの検討(最終年度)
実道実験で得られた各種挙動データを分析し、実務で適用可能なラウンドアバウトの本格導入プログラムとして取りまとめる。

成果物

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