研究調査

research study

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ドライバーの感情特性と運転行動への影響 ~感情コントロールのための教育プログラム開発を目指して~

プロジェクトリーダー:小川 和久
年度:2008年, プロジェクトナンバー:h076

背景と目的

従来の運転者教育は、合理的な人間行動を前提としてその内容が構成されてきた。したがって交通規則の知識、危険予測の知識、運転操作の技能など、知識と運動スキルの習得に教育訓練が偏っている。だが人間は、「情」によって突き動かされることが多々あり、しばしば非合理的な行動を選択する。ネガティブな感情(焦り、イライラ、怒り、不安など)、不適切な動機(無理な運転計画による居眠りなど)が原因で事故が頻繁に起きている事実を見過ごしてはいけない。交通行動は知識・技能を中心とした「知」と、感情・動機を中心とした「情」の二層から構成されるとする階層モデルが近年注目されている。前者の「知」の教育だけでなく、後者の「情」の問題も含む教育へと、運転者教育のあり方を再考する岐路に差しかかっていると言えよう。
 本研究の目的は次の通りである。第一に、感情特性が運転行動にどのような影響を与えているかを、心理的・生理的指標を用いて明らかにする。第二に、「情」をコントロールするための教育プログラムを開発し、教育効果を測定する。

期待される成果

上述の第一の目的のために、実験および調査を実施する。対象者は、一般ドライバーと長距離ドライバーである。感情経験の状況性と、反応(確認等の運転挙動、心拍等の生理的指標、主観的危険感等の心理的指標)との関連性を実験的に分析する。それにより「状況性→ストレス経験→運転行動」の関係を定式化する。またアンケート調査とインタビュー調査によって、ストレスを経験する運転状況を類型化し、対処行動の選択の仕方を明らかにする。とくに長距離ドライバーによる感情コントロールの習慣や知恵について情報収集を行い、それを教材作成に役立てることとする。
一方、第二の目的に対しては、二種類の教育プログラムを考案する。一つは、問題解決能力を高めるための教育である。グループ討議を通して、ネガティブな感情状態から脱却するための知恵を学習する。もう一つは、心身の安定性をつくる教育である。自律訓練法や行動療法など、既存の各種訓練法から、運転者教育に応用できるものを選定し加工する。これら二種類のプログラムを教育現場で実践し、ストレス経験の軽減等の効果を測定する。
研究期間は二年間とする。初年度は第一の目的に主眼をおき、基礎データの収集に力を注ぐこととする。

成果物

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