research study
東南アジアにおける情報共有型交通安全対策スキームの実施支援
背景と目的
マレーシアでは 単位人口 あたりの交通事故死者数 が 日本の 約 5 倍、 タイでも 世界2位 と深刻であり 、 日本の交通安全分野の経験や 成果に注目している。 IATSS 及び国土交通省のプロジェクトとして H10 21 年度に 千葉県鎌ヶ谷 市 、市川 市等向けに 開発、 実地適用 し たスキームを 同国ペナン 市等 に適用し、 事故・ヒヤリ 体験 データ 、現地観測データの 分析に基づく 対策案の企画まで実現した。 同様にタイでは IATSS プロジェクトとして H16 18 年度にウドンタニ、コンケン、チェンマイ市等でヒヤリ地図作りを実施している。 今回は、同スキームを現地の状況に適合させ、自律的運用体制への移行を目指す。併せてデータ収集・分析の高度化と知識・経験の国際的共有を目指す。
期待される成果
マレーシア・ペナン市に おいては、平成 29 年度に コミュニティー ID を導入したヒヤリ体験データ収集・提供システムを本格稼働させ 、 6 月のペナン州交通安全週間 、 7 月 の USM マレーシア科学大学 に よるキャンペーンにより、 約 400 件の ヒヤリ体験 データ を収集した。同時に検索機能も備えた同システムにより、コミュニティー ID 毎に収集データ を 提供している。 さらに、 USM と共同で電子地図などの GIS 利用環境を整備し、ヒヤリ体験データを分析した。 また、 従来の ペナン市 、ペナン州 、 USM に加えて セベランプライ市 、 ペナン道路安全会議 とも協力関係を構築した 。 一方、ヒヤリ体験データの安全運転管理への適用を目指し、現地の大手バス会社 Rapid Penang の クアラルンプール 本社と MOU を締結し、 当面は 2008 2010 年 に同社により収集されたデータの分析結果を始業点検や安全大会で活用し、その効果を同社バス関連の事故に関して評価する段取りを進めている。 これら により 、鎌ヶ谷スキームの現地状 況への適合と 自律的 運用体制への移行 の 可能性は 、かなり高まった。
タイでは、タイ運輸省が選定した交通安全対策モデル地区の中からスパンブリ市とコンケン市を対象に、道路局などのステークホルダーにより進められている交通安全対策に、鎌ヶ谷モデルをベースとした住民、
利用者の視点を取り入れた 交通対策推進の在り方を 取り入れることで、 総合的交通対策推進 の方法を広くタイ社会に 提示すると共に、 他地区への水平展開が期待される。なお、 スパンブリ市では、平成 28 年 8 月に開催したヒヤリ地図づくりワークショップの経験をもとに、平成 29 年 1 月に自主的な展開が始まっており 、コンケン市でも平成 29 年 2 月に第一回ワークショップを実施したことから、今後 2 年 でモデル地区のおける交通安全マネジメントシステムの構築を行う予定である。