research study
アジアにおけるITS導入に関する調査およびガイドライン作成の研究
背景と目的
アジア諸国において自動料金収受、交通管制、交通制御、プローブ収集、情報提供等のITSの導入が進められている。ITSの分野においても、IoT(Internet of Things)やFintechといった最新の技術が導入されつつある。シンガポールのような既に先進的なシステムを導入していて次世代の検討を行っている国、マレーシアやタイのような鋭意導入を進めている国々、ベトナム・フィリピン・インドネシア他のような導入の初期にあるか導入を検討している国々のように様々である。我が国は世界に先駆けてITSの導入に努めてきたが、その後のIT技術の発展により陳腐化したり、規制の問題から最新のサービスや技術の導入が遅れたりといった現象がみられるようになってきた。アジア諸国は、最新のIT技術を導入した高コストパフォーマンスなインフラ整備が行われている。そこで、本研究では、欧米や豪州といった先進国を調査して国際標準の動向を把握するとともに、アジアの現状を調査して、最適なITSの導入方法を検討する。世界のメガシティの多くはアジアに集中しているため、我が国とアジア諸国は類似の交通問題を共有しており、我が国とアジア諸国の双方にとって有用なガイドラインを提案できることが期待される。最後に本研究では、海外調査で得た知見をもとに、我が国のシステム更新の際に逆輸入可能な提案となることが期待される。
期待される成果
平成28年度(初年度)は、東南アジア諸国を中心に、わが国には見られない積極的なITSの導入事例を調査した。例えば、IoTとFintechを融合したトライシクル車両リース(フィリピン)、EVトライシクル運用(フィリピン)、タクシープローブ(タイ)、Electronic Road Pricing(シンガポール)などである。平成29年度以降は、これらのうち重要な事項については継続的に調査を行うとともに、わが国への逆輸入の可能性を検討する。
BRT、ATM(Active Traffic Management)などについては、提案はしたものの平成28年度において未調査である。ATMは、英国で考案されてから米国や豪州等で導入されている。わが国では、一面には交通法規の規制からATMの導入が遅れているという事情がある。平成29年度には、これらをはじめとして調査対象を広げることを検討したい。
また、平成28年度(初年度)は、通信技術の国際標準化やTC204((ITS国際標準化)について、国内でのヒアリングを行い、来年の調査の可能性を議論した。平成29年度は、国際標準化とアジアへの導入動向に関する調査を行い、わが国への反映の可能性を検討する。