research study
人間の環境情報処理からみた交通事故多発地点の原因解析
背景と目的
近年、我が国における道路交通事故は増加傾向にあり、また交通事故死者数は昭和63年以降連続して1万人を超え、 昨年度は1万人を若干下回ったとはいえ、未だに大きな社会問題となっている。このような交通事故の発生要因としては、人的要因、環境要因、車両要因、ならぴにこれらが相互に深く絡み合った人間・自動車・環境系の総合特性を要因とするものなどが上げられる。そこでこれらの各要因に注目し、それらを詳細に分析することによる事故発生原因の特定、ならぴにその成果を生かした事故抑制への提言が、交通安全の立場から重要と考えられる。しかし、一般的に交通事故は偶発性が高いものと考えられており、おのずとその研究は、発生した事故の統計的な解析によりその発生原因を抽出しようとする試みや、発生した事故状況を力学的に解析し、事故の発生から自動車の変形に至るまでの事故再現という観点からの原因推定等、過去の事故に対する原因解析に重きが置かれている。これら発生要因のなかでは、操縦者の認知ミス、判断ミス、居眠り等、人的要因が大半を占めているといわれており、交通事故を減少させるためには、特に人的要因に関しての検討が重要となることは言うまでもない。
他方、同様なコース形状が連続するような道路環境において、交通事故がある特定のカープに集中して発生しているという事故調査が報告されている。このような場所における事故発生件数は、その場所における交通総最から見るとわずかではあるが、事故が集中して発生する場所などでは、単に偶発的な原因であると片付けることはできない。このような交通事故では、操縦者の認知ミス、判断ミス等が主要因と考えられるため、このような道路環境下ではドライパの情報処理の観点から、事故要因を検討してゆくことが重要であると考えられる。しかしこれまでそのような研究報告はほとんどなく、またそのような解析に対する手法確立が行われていないのが実状である。
本研究ではこのような立場から、前述の事故多発地点およぴ道路環境が類似しているが事故が発生しにくい場所を例として取り上げ、そこを通過した場合のドライパの操縦動作の比較から、ドライバの情報処理過程を解析する手法確立の可能性について検討を行う。