研究調査

research study

Share
facebookxhatenapocket

情報の与え方と安全性に関する調査研究

プロジェクトリーダー:三浦 利章
年度:1993年, プロジェクトナンバー:H512

背景と目的

当研究の背景には二側面がある。その一つは応用的・具体的な自動車の情報化に関するものであり、今一つは視覚的注意の理論的な有効視野に関するものである。
1。 自動車の情報化
最近の急速な自動車の情報化に関連して、昨年度の国際交通安全学会H406プロジェクト(自動車の情報化と安全性)では運転者に与えられる様々な情報を整理、検討した。そのうえで、一般運転者および交通安全に関わる研究者に対して支援情報についての質問紙調査を行い、安全性、快適性、利便性の三側面から検討した(図l参照)。その結果、視覚的に与えられる支援情報の安全性をいかに評価すべきかという点が、実験的にさらに検討すべき問題として抽出された。この問題には、運転者の視覚的な注意はどのような特性をもつのかが明らかにされてはじめて答えられる。それでは、運転者の視覚的注意特性についてどのような点が明らかにされているのだろうか。
2。 運転者の有効視野
自動車の運転時に必要とされる情報の約90%は視覚情報であるといわれている(Hartman、1970)。視覚情報の獲得に重要となる視野は左右で約200゜に開けている。その中で、ある注視点の周りで認知に寄与する範囲を有効視野という。ある対象・箇所を見ながら同時に明瞭に認知できる範囲、例えば先行車を見ると同時に認知可能な範囲である。心的状態によって4゜から20゜位に変化する。これは、運転時に重要、な意味を持つ。有効視野が広いと必要情報を効率よく素早く認知できるが、有効視野が狭いと認知が遅れたり見落としが生じる。混雑場面やより深く注意を払わなければならない状況では有効視野が狭くなることが明らかにされている(e。g。、Miura、 1986 ; Miura、1992; 三浦、 1992)。これは安全確保上に重要な意味を持つ。
ところで、上で明らかにされているのは視覚的注意の上下左右方向での働き方であり、奥行き・遠近方向での注意の働き方は明らかにされていない。この点が合わせて明らかにされると、はじめて運転者に支援情報をいかに与えるべきかという問題に資することができる。ところが、このような重要性にもかかわらず、奥行き方向での注意の働き方や有効認知範囲を検討した研究は皆無に近い。実験内での観察者静止状態でのDowning& Pinkers (1985)、Gawryszewski、et al。 (1987)、Andersen (1990) の研究があるに留まる。
以上の背景に基づいて、当研究の目的は以下のように設定した。

当研究の目的は、注意の遠近移動機構と3次元有効視野の解明である。すなわち、遠近距離の異なる重要対象の発見・認知の基礎過程を明らかにすることである。例えば、先行車に注意していてその手前や向こうに出現する必要情報にドライバーはいかに気づき得るのかという問題である。
ひいては、遠近での注意、予期はいかに行なうべきか、標識、予告案内標識、室内デイスプレイはいかに設置すべきかという問題に関係することになる。
日常的で簡単な問題のように感じられるかも知れないが、実はそうではない。例えば、20m先の対象に注意を向けていたとしよう。この場合、同じ方向・視線上で注意距離から15m近い5m先の対象に注意を向けるのと、15m遠い35m先の対象に注意を向けるのに違いはあるのだろうか。この問題は運転者への支援情報の与え方に関係するとともに、より広く応用心理学研究や実験心理学研究に新しい知見を与えるものでもある。

成果物

同テーマの研究調査

一覧へ戻る