研究調査

research study

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規制的手法を中核としたTDMの調査研究

プロジェクトリーダー:太田 勝敏
年度:2002年, プロジェクトナンバー:H488

背景と目的

平成14年2月に実施された路線バス事業の規制緩和に伴って廃止された路線は3月末までの2ヶ月間に離島や過疎地域を中心に154系統に上った。この数を多いと見るか少ないと見るかは立場や見方によっても異なるであろう。問題はこの背後にある“廃止しようとしても廃止できない路線の数がその数倍にも上る”という状況であり、この事実が生活交通サーピスを確保する上で過疎地域が置かれている事態の深刻さを物語っている。過疎地域では需要密度が低いため、路線バスをはじめとする公共交通サービスの維持・確保が容易でない。しかし、逆にみると、利用者が少なくかつ利用バターンの特定も比較的容易であるため、都市部では得がたい個々の利用者のニーズに沿ったきめ細かなサービスが提供できる可能性もある。また、住民自らが主体的に公共交通システムの計画作業に携わる体制をとる、あるいは地域が有するさTD M(Transportation or Travel Demand Management、交通需要マネジメント)は、道路交通政策において、施設整備やその運用による交通サービスの改善といった供給サイドに対する施策に対して、運転者・利用者・荷主といった交通サービスの需要者に働きかけて移動の必要性と回数、その発生日時、目的地、交通手段、移動経路などの交通行動の変更を伺すことにより政策課題に対応しようとする需要サイドに対する施策である。現在直面している交通渋滞、交通事故、大気汚染、地球温暖化問題などの主要な交通問題は自動車交通に関連するものであること、そして従来から続けられている道路整備と交通運用施策だけでは解決が困難であることから、自動車交通の抑制、整序化に向けた新たな対応策として、TOM施策が重要となっている。
TDM施策は現在の道路交通の在り方に変更を求めるものであり、そのためには一般的な広報、啓発にとどまらず、交通管理者としての警察の立場から、一方では自動車交通に対する規制の強化、他方では代替交通手段に対する優先措置といった多様な交通管理施策を適用する必要がある。しかし規制的内容を伴う施策の適用は、関係する住民、事業者等多くの利害関係者の理解と協力が不可欠である。本書は、交通管理者たる都道府県公安委員会がTDM施策を計画し、実施する際に活用することを目的として、規制的手法を伴うTDM施策の適用に関して利害関係者を含めた社会的意思決定プロセスについて現在の知見を取りまとめたものである。本書の作成にあたっては、これまで住民の交通行動と規制的なTDM施策についての意識や受容可能性について体系的な調査分析、整理が必ずしも十分行われていなかったことから、新たなアンケート調査を全国の主要都市および特定の課題(沿道問題と観光交通問題)を抱える選定地区について行い、その成果を取り入れた。また、利害関係者の合意形成と市民参加、社会的意思決定プロセス、そして交通行動変容にかかわる社会心理学アプローチや個人マーケティング手法などの関連分野における研究、調査をレビューし、それらの最新の研究成果を取り入れる努力をした。しかし、わが国におけるTOM関連施策の適用は未だ日が浅く、本書の内容にも不十分な点もあると考えられることから、関係者には御寛恕いただきたし‘。最後に本書が交通管理の現場で適宜参照され、関連施策の企画から適用まで広く活用されると共に、それらの経験に照らして、内容が修正、加筆され、わが国の都市交通問題の改善に役立っていくことを期待したい。まざまな交通資源の組み合わせをきめ細かく検討する、といったことも可能である。平成12年度に実施した先行研究であるH296プロジェクト「過疎地域における生活交通サービスの提供システムに関する研究」では、路線バスによる生活交通サービスの提供に焦点を絞って理論と実証の両面から学際的に研究を進め、①住民属性ごとに行動パターンが大きく異なるものの各パターンの中では比較的共通した移動ニーズが認められる等いくつかの知見を見出した、②移動ニーズの充足度を運行ダイヤと関連づけて評価する方法を開発し、簡便な調査のみで路線バスによる生活交通サービスの提供水準を把握する方法論を構築した、などの成果が得られた。本研究ではこれらを踏まえ、地域の特性と実状に即した生活交通サービスを維持可能な形で提供しうるしくみを構築するための検討を、特に「コミュニティによるサービスの自己調達」という観点から行う。

成果物

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