research study
香川研究 -事故発生要因の分析と対策への提言
背景と目的
H24 年までは単位人口当たり事故件数が最悪で、H25 年もワースト5 であった香川県を対象に、地元の行政関係者及び研究者との共同研究により、実効性のある安全対策を提言する。さらに、提言策定過程を、他地域に適用可能な普遍的な枠組みとすることも目指す。そのために、IATSSの工学、心理学、法学、社会学等のわたる人的資源を活用し、マクロ分析とミクロ分析を融合させつつ、事故発生機序を広い視野で実証的に解明する。
期待される成果
①マクロ分析: H25 年度に、道路交通センサスデータの分析により香川県における自転車及び二輪車の利用率がかなり高いこと、交通事故調査原票レベルの詳細事故データの分析により高齢者の片側一車線道路の横断後半、及び自転車乗車中事故の比率が顕著に高いことが明らかになった。また、丸亀市を対象に道路交通条件により事故発生件数を説明するモデルを構築し、同市における局所的な諸状況が事故率の増大に寄与している可能性が示された。H26 年度は、類似他地域との比較等により、これらの分析を深める。
②ミクロ分析:H25 年度に、事故多発地点での現地観測に基づき、上記①の特徴的な類型の事故の発生機序を分析し、1) 過大な停止線のセットバックや隅切り半径などの交差点幾何構造が右左折交通の走行軌跡の乱れや過大な右左折速度に帰結している、2) 交差点の短い設置間隔及び変形交差点が交通流に無用な擾乱をもたらしている、3) 単路(交差点間)部の路肩側閉塞車線での二輪車による違反通行、中央分離帯の未設置が無秩序な横断、転回を助長していることなどが深く関わっていることが明らかとなった。H26 年度は、交差点改良等の社会実験により、上記要因を改善する対策の効果を実地検証する。
③社会・法律面の分析:上記②の分析に基づく道路幾何構造の改良において、沿道住民の合意形成が隘路となるとの、香川県に特徴的な状況が明らかとなった。社会実験で合意形成過程に関する調査、分析も実施し、交通安全の社会的背景を明らかにし、有効な対応策を提案する。