research study
交通安全対策支援システムのペナン市への展開
背景と目的
本提案の目的は、当学会の自主研究において研究開発された「交通安全対策支援システム※」をマレーシア第2 の都市ペナンに適用し、車社会化が進みつつあるアジア諸国等に対する新しい国際協力の手法を開発することである。
当該システムは、交通事故データとWebGIS 技術により市民から収集されるヒヤリ体験データとを統合管理し、安全対策の企画・立案を合理化、効率化するところに一つの特徴がある。また、収集した情報をインターネットにより市民とも共有し、関連する合意形成を促進する機能も果たしてきた。当該システムは、千葉県鎌ヶ谷における安全対策スキームの中核ツールとして開発、適用され、交通事故の削減に実効をあげてきている。さらに、隣接する市川市、白井市への移植にも成功し、国土交通省の2008 年度新道路技術会議優秀技術研究開発賞を受賞している。
マレーシアでは、近年の経済成長に伴って車社会化が進むにつれ、交通渋滞と交通事故の増大が社会問題化している。同国における2005 年の事故件数は12。6 件/千人、死者数は2。4 人/万人で、それぞれ日本の2 倍および5 倍程度とかなり高く、対応を求める意識は高まりつつある。
同国のモータリゼーションの発展には、二輪車を含め日本車の増加、道路整備、交通管制システムの導入と日本の寄与するところ大である。このことが直接的原因ではないが、交通事故の多発を放置しておくわけにはいかない。交通安全対策にも、日本が大いに貢献すべきである。
次頁の「ペナン市でのこれまでの活動経緯」において詳述するように、同市当局および警察当局とは、すでに当該システムを適用した交通安全対策の施工を前提として、技術的な情報交換と体制づくりが進行中である。ただし、当該システムが日本と文化、社会システム、言語等が異なる地域に適用され、協調的な効果を発揮するためには、さらなる研究、開発が必要である。
具体的には、①複数言語パックの適用性の検討、②インターネットによる国際的なデータ共有の可能性の検討、③市民からのデータ収集方法・内容の多様化、汎用化 ④日本と形態が異なる行政組織における安全対策立案過程への適用、を実施する。
期待される成果
① 交通安全対策支援システムのペナン市への技術移転
・初年度として移転実施計画を立案する。その中で、下記②、③を研究課題として想定する。
・技術移転には、当該システムの移植と運用支援、および当該システムにより得られる分析情報等に基づく詳細調査計画立案、交通安全対策立案への支援等を含む。
② 言語パックの適用性およびインターネットによる国際的なデータ共有の可能性の検討
・1バイト系言語(英語等)と2バイト系言語(日本語等)とを併用可能な事故分析、ヒヤリ体験入力システムの開発、DB の構築と、およびそれらの適用性の検討 ・交通安全情報を国際的に共有可能なWeb サイトの構築と適用性の検討
③ 事故データ項目の最適化や、市民からのデータ収集方法と内容の多様化の試み
・現地の交通事故DB の検討とデータ項目の最適化と汎用化
・ヒヤリ体験入力システムを応用し、交通安全対策の検討に必要な路上駐車および交通渋滞に関する情報を、市民から収集する方法の開発と適用性の検討