研究調査

research study

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台湾地震の交通調査

プロジェクトリーダー:飯田 恭敬
年度:1999年, プロジェクトナンバー:H166

背景と目的

1999年9月21日深夜に台湾中部で発生した集集大地震は、マグニチュード7。3の規模であり、台中県ならびに南投県を中心に、犠牲者2、400名以上、負傷者10、000名以上、全壊建物30、000棟以上の甚大な被害を及ぼした。交通分野においても台湾島西部の南北の移動を担う国道3号をはじめ、幹線道路や街路網が寸断され、市民生活や復旧・復興活動などに少なからず影轡をもたらしている。
国際交通安全学会においては、5年前に発生した阪神・淡路大震災において、発災直後から震災が交通にもたらした影響や、交通マネジメントの方法について、極めて精力的に調査研究を実施し、学術上及び実務上大きな成果を挙げてきた。その中で判明したことは、地震などの災害が発生した際に、適切な交通管理のための交通状況の調査について、何を対象に、どのような方法・時点で実施すればよいのか、すなわち、災害発生時などの緊急時における交通調査の体系的方法論が今まで斃理されていなかったことである。そのため、阪神・淡路大震災における調査研究においても、アンケート調査、踏査、交通写真による調査、ビデオ調査等で試行錯誤的に調査を実施し、計画分析に必要なデータを収集した。集集大震災においても状況は同じであり、復旧・復興のあり方および将来に備えたよりよい震災対策を確立するためには、現地において速やかに調査研究活動を行うことが必要と考えられる。
これらのことから、阪神・淡路大震災における我々の研究成果に基づき、災害時における交通調査および交通管理について台湾研究者と知識を交換し、相互の災害時交通管理に関する理解を深めることは極めて有益と思われる。なお、集集大震災は、山間部で発生しており、なおかつ平常時における交通データ収集についても日台で大きな隔たりがあるため、阪神・淡路大震災時の我々の経験が全てそのまま通用するわけではない。そのため、台湾研究者と議論を重ね、我々の経験をベースに調査を展開することは、今後我が国においても発生しうる、山間部での地展災害における交通管理のあり方に対して、有用な知見をもたらすものと考えている。

期待される成果

本プロジェクトは、上記のような認識のもとで、昨年度11月に緊急プロジェクトとして発足したものである。本年度の主な研究活動は以下の通りである。
1) 日本から阪神・淡路大震災において調査研究に携わった研究者2名(神戸商船大学小谷通泰教授、京都大学宇野伸宏助手)が台湾に赴き、阪神・淡路大震災時の交通調査について、台湾側研究者に知識提供を行った。
2) 阪神・淡路大震災時の交通調査を参考に、台湾側研究者が震災時における交通状況の調査を実施した。
現地調査については、日本側研究者の知識をベースとしているものの、実際の調査は現地で行うこととなるため、台湾側の研究者がレポートとしてまとめたものとなっている。プロジェクト発足は11月であり、調査解析のための期間は実質3ヶ月もなかった。今年度は、震災における実態調査が中心となっているが、災害時の交通状況は一過性のものであるため、郊外部で発生した地震災害における交通調査を行ったという点で非常に貴重なデータを収集したといえる。これらの交通データやデータ収集方法を、阪神・淡路大震災における状況と比較分析することにより、今後おこりうる地震災害における交通調査のマニュアル化、および非常時における交通管理の策定方法について、体系化が進むものと期待される。

成果物

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