研究調査
research study
交通事故対策効果の評価・調査法に関する実践的研究
プロジェクトリーダー:大蔵 泉
年度:1999年, プロジェクトナンバー:H161
背景と目的
交通事故対策は、現況解析→問題点抽出→対策案抽出→対策案の比較評価→対策案の決定・実施→対策効果の評価、といった過程を繰り返して実行される。「対策効果の評価」は、その結果が以後の対策案策定段階での参考資料となるので重要である。
主に用いられている対策効果の評価手法として、事前・事後調査(Before and After Study)がある。
この手法では、一般には、もし対策が施されなかったとしたら発生事故に変化はない、という仮定のもと、対策の事前と事後の事故発生の様子を直接比較する方法がよく用いられている。
このような「事前・事後調査」には問題点がある。それは、もし対策が施されなかったとしたら発生事故に変化はない、という仮定が厳密には成り立たない、ということである。その要因として、交通状況の経年変化、社会状況・気候その他の変化などいくつも考えられるが、最も問題になるのが後述の「平均への回帰」現象である。これは、事故の稀発性による偶然変動に起因するものであり、これを考慮しないと対策効果の過大評価につながる恐れがある。
事故の稀発性による、対策効果の評価の歪みを除去する統計的な分析理論の提案は、2-3に示すようにいくつか存在している。しかしながら、これらは実際の場に利用されることがきわめて少ない。そこで本研究では、これらの評価理論を実際へ適用する際の課題を明確にし、どう対応すれば歪みを低減させた対策効果の評価に結び付けられるのかを、実証的に明らかにしていくことを目的とする。