research study
アジア地域における健康起因事故防止に関する国際比較研究
背景と目的
近年、運転者の健康状態が交通事故の主要な危険因子であることが報告されており、わが国でも健康起因事故防止は交通事故対策の重要な課題と認識されているが、特にアジア地域において健康起因事故対策は未だ十分に行われていない。2020年度の社会貢献プロジェクトでは、中国ならびにタイの専門家とともに意見交換を行ってきたが、健康起因事故への対策以前に、人々の認識も未だ十分に涵養されていない状況であった。そこで本研究では、アジア地域における健康起因事故に関する意識の実態を明らかにするとともに、健康起因事故防止の意識を醸成するための普及啓発事業を行うことを目的とする。具体的には、2020年度の社会貢献プロジェクトで作成した日本語版普及啓発動画の外国語版(英語、中国語、タイ語)を2021年度作成した。本年度はこの啓発動画を用い、各国で動画視聴後のアンケートを実施し、健康起因事故に関する意識を調査し、国際的に比較する。また、申請者らはこれまでの研究プロジェクトにおいて、職業運転者を対象とした睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニングを実施し、わが国におけるSASの社会的予防体制の構築を行ってきた。さらに、視野障害の簡易検査であるクロックチャートを用いたスクリーニングも行ってきた。今後、本プロジェクトではこれまでの研究の知見を基に、職業運転者を対象とした日本型のSAS検診モデルならびにクロックチャートによる視野障害のスクリーニングについて、アジア地域における実施可能性についても検討する。
期待される成果
本研究では、普及啓発動画の外国語版(英語、中国語、タイ語)を用い、各国において動画視聴後のアンケートを実施し、健康起因事故に関する意識を調査し、国際的に比較する。これにより、健康起因事故に関する意識について各国の実態を把握し、比較することができ、各国における健康起因事故防止に関するより効果的な普及啓発の方策を検討するための基礎的な知見を得られることが期待できる。また、日本型のSAS検診モデルやクロックチャートによる視野障害のスクリーニングをアジア地域で展開することにより、健康起因事故防止の国際的機運を醸成することが期待できる。