研究調査

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児童生徒等に対する効果的な交通安全教育を普及させるために何が必要か?教育普及スキームの構築研究?

プロジェクトリーダー:小川 和久
年度:2018年, プロジェクトナンバー:1806

背景と目的

児童生徒等に対する主体的学習による交通安全教育が効果的だと実証されるようになってから久しい。たとえば、カーブクラフトによる横断訓練、申請者が開発してきたミラーリングによる自転車教育など、子どもが「主体的に考える」要素を内包する教育である。その他、モデリング、交通安全マップづくりなど、近年、子どもの主体性を重視した効果的な教育方法が様々に実践されるようになってきた。このように子どもたちが自らの安全を自ら考える教育が実践されることで、意識・行動変容が導かれ、児童生徒等の事故リスクが低減することが期待される。にもかかわらず、学校等の教育現場では、依然、知識中心の一方的な従来型の指導に留まっているのが実状である。そこで、効果的な教育が普及しないのはなぜかという素朴な疑問に立ち返り、普及を促進するためのスキームを構築することを本研究課題の目的とする。

期待される成果

教育普及スキームの重要な構成要素として、以下の4点を想定している。これらの要素は、現在、内容的に充実した状態だとは言えず、また教育関係者への情報共有および利用可能性においても十分な状態にはなっていない。教育普及の支障となっている要因であり、そこで、研究活動の初年度は、申請者が関わっている教育実践の場を利用して、エビデンス等を中心に基礎資料を集積して、内容の充実化を図ってく予定である。次年度以降、収集した基礎資料を利用しやすい状態に加工し、普及のための戦略および枠組みを考案していく。最終的に、国内外の教育実践の場で試行し、普及スキームの適切さを検証する。
①教育プログラムの開発:すぐに使える教育プログラムが不足している。グッドプラクティスを蓄積した効果的な教育実践の事例集を作成し、教育関係者が指導案づくりなどに活用できる状態に加工する。また利用可能な仕組みを考案する(教員研修の場での提供、HPからのダウンロードなど)
②エビデンス(実証データ)の蓄積:効果が示されることで説得力が増す。なぜ必要な教育なのか、その根拠を示すためにも、効果測定の実証研究を継続的に推進し、エビデンスを蓄積する。
③教材・評価ツールの開発:たとえば、幼児の横断行動の安全性を評価する簡便なツールが意外にも存在しない。能力評価ができないため、何をどのように教育したらよいのか分からないというのが現場の実状である。教材についても同様である。危険予測の映像教材など入手できるものは限られている。教材・評価ツールの充実化を図り、ICTを活用するなど、利用可能な仕組みを模索する。
④人(指導者育成):安全教育指導者の育成は普及のキーとなる。主体的学習を実践するためには、コーチング技法など、比較的高度なコミュニケーション能力が求められる。ゆえに指導者研修は重要であり、効果的な研修方法(マイクロコーチングなど)や研修教材(eラーニングなど)を考案することとする。
 児童生徒等の行動と意識が改善されれば、交通事故のリスクが低減し、交通事故の減少効果が期待される。ただし、問題は普及の規模である。教育行政と連携を図りながら、ある程度の規模(たとえば中学校区単位の地域規模)での実施が可能かどうかを検討し、教育普及スキーム構築の足がかりとしたい。効果と普及の確証が得られた段階で、県・市教育委員会および文部科学省に対して、構築する教育普及スキームをIATSSから提言することとする。また、後述する通り、東南アジア、欧州諸国でも受け入れられるスキームになるかどうかについても確認作業を行いたい。

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