research study
歩行者自転車優先地区(Autofree District)の計画 ~交通管理計画のモデルプラン作りと実現へのプロセス
背景と目的
自動車交通の過度の増加が都市地域の生活環境を悪化させたことから、世界の多くの都市で自動車交通の抑制と歩行環境の改善が進められてきている。特にヨーロッパの都市の中心部では歩行者専用地区(Pedestrian Precinct)が作られ、歩行者の自由に行動できる快適な環境空間が形成されている。我が国においても、歩行者交通の安全と優先化が求められ、コミュニティ道路や歩行者天国など歩行者交通対策が実施されてきた。
しかしこれらの施策は部分的、一時的なものも多く、必ずしも広範囲の真に快適な歩行環境を実現しているとはいえない状況である。我が国の都市地域では・利用できる道路空間が狭小なことに加え、歩道上の自転車の存在が歩行環境の快適性を損なう大きな原因となっている。現在各方面から声高に叫ばれている歩行環境の快適化、アメニティの増大のために、また障害者のバリアフリー化を促進するためにも、現状の自転車交通をそのままにしておいては問題があり、自転車交通に対する何らかの施策が必要なことは明らかである。
一方、地域の生活環境改善だけでなく、地球環境の観点からも炭酸ガスの発生の削減・省エネルギーのために自動車利用の抑制が強く要請されている。そのために短距離トリップの交通に対しては、燃料を使わず排気ガスを出さない自転車の利用が望ましく、自転車利用の促進政策は世界的な傾向となっている。日本の都市では多くの地域ですでに自転車の利用が多く見られるが・大部分の道路で歩行者と混在した交通運用となっており、歩行者ばかりでなく・自転車にとっても安全快適な道路空問ではなく、自転車利用を増加させる環境が形成されていない。また国や自治体の施策としても環境や省エネルギーの観点から自転車利用の促進を図る具体的な交通政策はほとんど有していない状況である。
本研究は、我が国の都市においてなぜヨーロッパの都市に見られるような優れた歩行者専用地区が実現されないのかという観点から、歩行者・自転車にとって安全、快適な交通環境を実現するための障害は何であるか、それを解決する手がかりとプロセスは如何にしたらよいかを明らかにすることを目的としている。
そのため本調査研究では、現状の自転車利用の問題点と安全性、自転車利用者の意識を分析するとともに、実際の都市地区を対象に交通環境改善対策案作成のケーススタディを実施して、歩行者、自転車交通に対する環境改善のための具体的な交通施策の手がかりを探ることを目的とした。その結果を踏まえて、道路空間の使い方、施設整備、自転車の通行方法、路上駐輪などの交通規制のあり方、交通ルールの教育指導(モラルの向上)方策、道路利用者、地域住民の自治意識と交通管理のあり方など、具体的な交通施策を検討、提示することを次の段階の研究目標としている。