研究調査

research study

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女性職業ドライバーに関する調査研究

プロジェクトリーダー:栗原 典善
年度:1994年, プロジェクトナンバー:H615

背景と目的

ポスト・バブルの景気停滞のなかて、女子学生の就職難が大きな問題としてクローズァップされるようになった。いわゆる総合職への女性の採用を、企業が絞り始めたからだ。1986年4月に男女屈用機会均等法が施行され、女性の社会進出が促進されてきたが、男女の屈用・労働条件にはまだ附たりがある。
中学卒業以上の労働可能な女性人口のうち実際に働いている人の割合、すなわち女子労働力率は、90年に初めて50%を越えた。これは女性の社会進出を象徴する数字であったが、世界で最も女子労働力率の高いスウェーデンの82、3%に比べると、その差はまだ大きい。
日本では、年齢別に見た女子労働力率がM字形のカープを描く。学校を卒業して就職しても、結婚や子育てのために退職せざるをえず、子育て後に再就職するというケースが多いからだ。92年施行の育児休業法においても、1年間の育児休職が認められることになったが、その間の賃金は保証していない。いっぽうスウェーデンでは、女性が仕事と家庭を両立しながら働き続けられるための政策が強力に推進され、女子労働力率のグラフは台形を描くという。また、日本独特の長時間労働が男性の家事参加を困難にし、女性が家庭にとどまらなくてはいけない状況を作っている、との指摘もある。男女の雇用・労働条件の隔たりを埋めるには、雇用機会や保育支援のための制度や設備、さらにば性別役割分担意識の解消が求められるところであろう。女性の潜在的労働力は高い。従来は「男の職場」と思われていたところでも、女性に門戸を広げることで新たな可能性が開けてくる。そしてそれは、すでに始まっている。
街を走る無数の自動車を見れば、女性ドライバーにとって自動車が確実に生活の足となっていることが実感される。そのなかには営業の外勤など、仕事で運転している女性もいるだろう。さらにタクシーやトラックでも、女性ドライバーを見かけるようになってきた。路線バスの女性運転手や、派手に飾り立てたダンプ・トラソクを駆る女性が、雑誌で紹介されたりもしている。「女だてらに」と思う人がいるかもしれないが、彼女たちはもっと自然に、肩肘張らずに働いているようだ。こうした女性職業ドライバーはなぜその仕事に就き、どのような意識で働いているのだろうか? 毎日の仕事や生活のなかで、どのような楽しさや不自由を感じているのだろうか? それを解き明かすことは、我が国の交通環境の現状と将来を考える上での重要なポイントとなるであろう。

成果物

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