research study
鎌ヶ谷市をモデル地区とした「交通事故半減システム」の研究
背景と目的
全国の平成12年中に発生した人身事故件数は、931、934件と史上最高を記録し、また、交通事故による死傷者は、1、164、 763人を数え、発生件数および死傷者数とも依然として増加傾向にある。交通事故が個人ならびに社会に与える損害は甚大なものであり、現在の交通事故情勢は憂慮すべき事態である。
このような中、警察庁と国土交通省は、平成8年度から事故多発地点において交差点改良や道路照明の設置、交通規制の見直し等の事故削減施策を集中的に実施する「事故多発地点緊急対策事業」を推進しており、全国3、196箇所の事故多発地点に対し、都道府県公安委員会と道路管理者からなる事故多発地点対策協議推進連絡委員会を設立し、合同現場点検および各種対策を立案・推進している。
平成12年度末現在では、約2、500箇所で事業が実施済みあるいは事業中であり、平成8年度末までに何等かの対策が完了した約250箇所の交通事故発生件数は、前年度比で約25%の減少となっており、一定の成果は上げている。
一方、近年、地方自治体等をはじめとして、増加傾向にある高齢者の交通事故を予防するものとして、(財)国際交通安全学会(以下IATSS) により提唱された「ヒャリ地図づくり」が盛んに実施されている。ヒャリ地因の作成は、誰でも気軽に参加でき、日ごろの「ヒャッ」とか「ハッ」とした実体験を語り合いながら危険体験地図を作成する参加型活動であり、平成10年秋の全国交通安全運動期間を中心に、高齢者や小学生による作成活動が全国的に行われた。この活動は、危険箇所を浮かびあがらせるだけにとどまらず、活動全体を通して交通安全に対する関心を高めていこうというものであり、完成した地図は、広報紙に掲載したり、地域の交通安全情報としてパンフレットにして配布したりするなど、その活用方法も幅広く、住民の交通安全活動への参加意識及び交通安全意識の向上を図ることができる活動として全国的な広がりをみせている。近年のインターネットの普及により、行政のホームページを利用したヒャリ地図情報の公開等が行われ始めている。
このように様々な交通安全に関する動きが活発に行われている今日ではあるが、90万件を超える人身事故、100万人以上になる死傷者数等、増加の一途を辿る交通事故を削減するためには、抜本的な交通安全対策の取り組みが必要であるといえる。IATSSでは、交通事故を大幅に削減することが可能と考え、平成9年度を初年度に「中期的に事故を半減させるための提言」プロジェクトチーム1)を発足させ、わが国の自治体(市レベル)における事故減少の取り組み方を検討してきた。その研究活動の一環として、千葉県鎌ヶ谷市をモデル地区に、実際の交通事故データや市民のヒャリ体験情報を活用した円滑かつ効率的な交通安全対策を支援するためのツールとして、交通事故データやヒャリ体験情報の入出力を始め、それらを活用した計数的・科学的な事故分析や費用対効果を踏まえた交通安全対策の実施が可能となる交通安全対策支援システムの開発を行った。本研究では、開発した交通安全対策支援システムについて、その開発のコンセプトを示すとともに、交通事故データやヒャリ情報の入出力、データ集計等の本システムの機能や本システムの機器構成等の紹介および実際にシステムを利用したデータの集計・分析方法についての紹介を行い、交通安全対策支援システムの活用方法について説明を行うものである。