research study
新学際プロジェクト 超高齢化都市に要求される「移動の質」
背景と目的
わが国は、かつて経験したことのない超高齢社会を迎えるが、実際には高齢者の多くは元気であり活動の機会を求めている。今後は、社会全体が高齢者の活力を活用するために、新たなモビリティ手段の開発とその社会受容を促す制度が求められる。また、活力ある生活を維持するためには多くの世代が共存し支えるためのコミュニティ(場所とアイデンティティ)が必要である。そのようなモビリティとコミュニティの創造こそが、超高齢社会における交通の最大の使命である。
当プロジェクトはこのような問題意識から出発し、以下の観点から、既存の交通基盤をもとに発想するのではなく、各世代が自らの問題として参加できるイノベーションモデルを構築すべきであるとの点で意見の共有をみた。
・自動車しか選択肢のない従来の交通社会から、自転車やパーソナル交通を選択できる多様性のある交通社会への心の転換
・場所をつなぐ受動的な交通から、人をつなぐ能動的な交通への視野の拡大
・高齢者のコンピタンス(生きがいをもって社会に参加・貢献できる力)を高め、地域の活力とQoLの向上を図るシナリオ
・それを実現するための都市・交通のヴィジョニングの提案
このような枠組みを俯瞰的・統一的に示すために、今年度は最終年度として、以下の方法で研究を継続展開させて提言に結実させる。
1) 新たな行政システムのあり方に関する検討
イノベーションへの社会的受容性を高め、自治体がその特性に合った都市・交通ヴィジョンを自発的の策定し迅速に実現するための制度的枠組みを検討する。
2) コモビリティに関する社会実験
特定地域において多世代の交流・交通拠点(結節点)の創成に関する社会実験を行う。これにより、誰にもわかりやすく、自らの問題として参加できるコミュニティとモビリティ(コモビリティ commobility)の統合デザインを示す。
期待される成果
・コモビリティの社会実験を岐阜県美濃市および香川県高松市において3ヶ月程度実施する。
・具体的には、シェアリング型の電動アシスト自転車、セニアカー、小型EV等の移動手段とそのサービスポートを「うだつの街並み」に配置すると共に、住民および来街者の交流スポットを道路空間内外に提供する。パーソナルな移動手段と交流の場の提供が、マイカーに依存した住民の「心の慣性」にどのように作用し、交通行動・回遊行動およびまちの賑わいに影響を及ぼすかを追跡調査する。
・上記の移動手段を利用する際に、特に高齢者の安全性を確保するためのセンサー装置等の開発を試みる。
・システム創成の観点から、コモビリティの創成のために必要とされる移動手段・道路空間・制度的要件を明らかにする。