研究調査

research study

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歩行者信号制御における音楽の効果の実証的研究

プロジェクトリーダー:赤羽 弘和
年度:2008年, プロジェクトナンバー:H081

背景と目的

現行法制度において、横断歩行者の信号制御における青・青点滅表示は、車両に対する青・全赤表示に相当する。しかし、青点滅時間が短いために、横断歩行者の信号遵守率や左折車との錯綜の発生等に影響している可能性があるとの指摘がある。
H963プロジェクトにおいては、銀座四丁目交差点に青時間中に音楽を流す「音響付き歩行者信号灯器」の設置し、青時間の残余が短い時間帯において歩行速度を上昇させ、青点滅表示中の横断開始を抑制するような心理的な働きかけを行い、設置前後での歩行者の横断挙動変化を調査・分析した。また、海外でも活躍中の音楽家である渋谷慶一郎氏に作曲を依頼し、耐候性はあるが狭帯域のトランペットスピーカの能力を活かすとともに、設置箇所のサウンドスケープに適合させて歩行者や周辺の受容性を高めるように配慮した。約4、000人のビデオ観測による歩行者データにより検証を実施した結果、フライングの抑制効果、交通処理能力の向上が認められた。さらに、赤表示までに横断を終了できる歩行者の割合の低下までには至らなかったが、音楽による歩行速度の統計的に有意な最大1割程度の上昇効果が明らかとなった。さらに初回の曲の効果と諸評価に基づいて再作成された曲は、各方面の評価も高く3/18に予定されている実地観測結果が待たれる所である。
H20年度は、警視庁管内の信号機運用基準との関係から実施できなかった、青点滅表示中の警告的な音楽による横断開始の抑止効果を、同管内以外の横断歩道で実地実験する。この実験により、歩行者信号制御における視覚と聴覚が同期することによっての音楽の効果を見極めるとともに、青点滅開始以降の横断開始を抑制して赤表示までに横断を終了できない歩行者の明確な減少を目指す。

期待される成果

すでに実験に使用する機器および曲は準備されているので、適切な横断歩道を選定して実地実験に必要な行政的な手続きが整い次第「H963音響付き歩行者信号灯器」を横断歩道に設置し、H19年度の手法に則って以下のように観測・分析を実施する。
歩行者の横断開始時期、横断速度、歩行者赤開始時の横断未了状況等を実地観測し、横断の安全性向上効果を定量的に評価する。また、歩行者に対するアンケートを実施し、主観的評価の状況を分析する。遅くとも11月頃までには設置後調査を完了して分析結果をまとめたいが、行政的な手続きに依存する面もある。
期待通りの成果が上がった場合には、H19年度の結果とともにIATTSレビューに投稿するとともに、関係機関に実運用を働きかけたい。現行の視覚障害者支援用機材を使用しているため、音データが記録されたROMの交換のみで実運用できる見通しである。

成果物

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