research study
市民参加型安全キャンペーンモデルの提言
背景と目的
交通安全運動のマンネリ化が指摘されるようになって久しい。それは、運動のあり方が、そして内容が、建て前論に堕して、国民の心を動かす力を失ったということではないのか。歩行者を、自転車利用者を、バイク・ライダーを、自動車利用者を、交通事故にまきこまないために、ルールが必要なことは当然だし、人々がそのルールを知り、かつ人々がそのルールに習熟することは大切だ。
安全運動の目的は、人々にそのルールヘの関心を起させ、ルールに習熟してもらうきっかけを作ることにあったはずだ。そして、交通事故が急増した昭和30年代から40年代にかけては、国民も事故に対して大きな関心を持っていたし、交通安全運動の関係者もそれだけの危機感と、熱意を持っていたから、たとえ多少は建て前的な点があったにしても、運動によって、安全への関心を、何歩かは進めることができた。
しかし、その交通安全運動が浸透力を失いかけたいま、国民が改めて、安全への関心を高めることができるような運動のあり方を、さがす必要があると考え、このプロジェクトを始めることにした。
これまでの国際交通安全学会の活動は、研究の成果を研究者や行政機関。あるいは民間団体が十分に利用してくれることを前提にして行われてきた。しかし私たちは私たち自身の問題として、研究の成果をどのような形で一般社会に活かしていくのかといった問題にも関心をもつに至った。「ニ輪車交通教育の実践モデル研究」もその例の一つだが、私たちプロジェクトチームは研究の成果を実際に活用し、生かすための手法づくり(キャンペーン)の研究をすることになり、一つのテストケースとして「シートベルト着用推進」をとりあげたのである。
高速道路における非着用ドライバーには、 1点の行政処分点が科せられる、という旨の法案が国会に提出されていたのは、ちょうどこの時だった。シートベルト着用問題は社会的関心を集めていたわけだが、それ以上に、ンートベルトの着用は仮に法律で着用を強制しても、着用の必要性を本当に理解してもらえなければ、完全な効果は期待できないという問題意識が私たちには強かった。
ーロに市民といっても、関心の持ち方、理解の仕方はさまざまである。とりわけ交通問題の楊合、事実を知らせ、関心を持ってもらうところまでは、従前のような型のキャソペーンでも進むのだが、それだけでは「行動」に至らない。どこかで、その人の考え方を転換させる動機づけの機会が必要なのである。したがって、ンートベルト着用に対しても、一様の仕方で、一様の動機づけをすることは不可能である。誰に、どんな形で、どんな内容を、伝えるかを、分類して考える必要があろう。そこで、最初の一歩として、 すでにベルトを着用している人々を、オビニオンリーダーになり得る可能性を持つ人々と考え、そのリーダーが、周囲の人々を着用の習慣にまき込んで行くことはできないか、 と考えた。そして、まず、そのオヒ゜ニオ`ノリーダーにとって、参考になると考えられる資料を、マニュアルとして作成することにした。