research study
子育てしやすく子どもにやさしい交通環境実現のための教育・行動変容プログラムの開発と適用
背景と目的
人口減少・少子高齢社会に直面する我が国において、子育てしやすく子どもにやさしい交通環境の整備が喫緊の課題である。国土交通省では、ベビーカーマークの普及をはじめ、子育てにやさしい交通環境整備の促進とともに、子ども連れおよび子育てに対する国民の理解(心のバリアフリー)向上に向けた施策を進めている。一方、欧米では、親による車送迎に依存せず子どもだけで移動できる環境整備が、子どもの能力開発促進とともに、過度な自動車利用削減にも寄与するものとして、Children’sIndependent Mobility(子どもの移動自由性)の重要性が認識されている。
以上の背景の下で、本研究は、安全・安心で持続可能な子育てしやすく子どもにやさしい交通環境実現のために、子ども連れおよび子どもの移動に必要な交通ルールやマナーに関する教育プログラム、および親による過度な車送迎を抑制するための行動変容プログラムを開発・適用し、その効果を検証することを目的とする
期待される成果
子ども連れ移動の交通手段は、我が国の大都市ではベビーカーや公共交通および子ども乗せ自転車が多いが、地方都市では自動車に依存し、また途上国のベトナム等ではオートバイが主である。一方、子どもだけの移動については、我が国のように子どもだけで通学できる国は珍しく、海外諸国では学校の立地や治安の問題から親の送迎に大きく依存している。我が国の大都市と地方都市、そして海外諸国における都市・交通環境や社会的文化的背景の違いを考慮した教育・行動変容プログラム(対面の講義+実技、Webサイト)を開発し、子育て世帯に加えて、子育て予備軍である若者(大学生など)および孫のいる高齢者も対象に適用することで、より安全・安心な移動の実現、子ども連れおよび子どもに関わる交通事故の削減、子育てに関する心のバリアフリーの醸成、そして少子化対策にも貢献できる可能性がある点が、先見性と実際性を有するものと考える。また、宇都宮に導入されたLRTなど、公共交通サービスレベルの改善が、子ども連れおよび子どもの交通行動変容に与える影響にも着目する。