research study
カンボジアにおける交通安全行動変容プログラムの開発と実施
背景と目的
アジアの多くの国で経済成長を実現するなかで、急速なモータリゼーションが進ん でいる。それは、途上国であるカンボジアでも例外ではない。しかし、その弊害とし て、様々な交通課題が起こっている。とくにカンボジアでは、幹線道路(国道 5 号 線)の整備・高規格化に伴い、周辺地域での交通事故が増加している。この対策の一 つとしてカンボジア政府のアクションプランに交通安全教育や行動変容プログラム が位置づけられ、日本の国際協力機構(JICA)による交通安全技術協力プロジェク トも立ち上げられた。この行動変容プログラムの開発と実施においては、クロスセク ターの連携が求められ、特に現地において連携を主導できるリーダーシップスキルの 高い人材・組織の協力が必須である これに呼応して、本プロジェクトでは 2022 年度に IATSS フォーラム・カンボジ ア同窓会(CIAA)ならびに JICA と連携しながら、IATSS で行動変容プログラム・ チームを立ち上げた。さらに、現地での実態把握と行動変容理論の文献調査に基づき、 学際的な視点から新たな行動変容プログラムの概念枠組みを整備した。 2023 年においては、プログラムの具体化と、現地パイロットエリアにある学校で のワークショップ実施等を通じ、交通事故減少に寄与することをプロジェクトの目的 とする。特に、交通弱者であると同時に、将来のアクティブな道路ユーザーとなるこ とが見込まれる、子どもたちに主眼を置く交通安全教育のための行動変容プログラム を開発し、試行することを目指す。
期待される成果
本研究の具体的な成果としては、交通安全に関する行動変容プログラムの開発と、 それを社会実装していくことで、中期的な視点から交通事故者数を減らしていくであ る。この行動変容プログラムの開発にあたっては、CIAA、カンボジア政府(公共事 業・運輸省、教育・青年・スポーツ省)、JICA と連携することによって、カンボジア の実状に即したプログラムとなることが見込まれる。 このプロジェクトでは、学校(小学校、中学校、高校)における交通安全教育のた めの行動変容プログラムを開発し、その成果を検証する。とくに、プログラム開発後 は、CIAA ならびに JICA と協働して現地の学校でワークショップやクロスセクター 対話を開催することによって、実際に子どもたちの交通安全意識が向上し、行動変容 を促し、交通事故数の減少に寄与することが期待されている。 こうした交通安全に関する行動変容プログラムの開発は、東南アジア・南アジア地 域では未だ十分に行われておらず、本研究は先駆的な取り組みとなる。そこで、本研 究を実施後は、他国の IATSS フォーラム同窓会とも連携して、東南アジア・南アジ アの各地でも、こうしたプログラムの開発ならびに社会実装を行っていくことが見込 まれる。 さらに、IATSS として近年関係を深めている JICA との連携を具体化する取組と しても、本研究を位置づけることができる。この連携を契機に、JICA、さらには他国 政府や国際機関との国際連携を活発化させていくことが期待できる。