研究調査

research study

Share
facebookxhatenapocket

自動運転車と共生する社会―その基盤整備に向けた包括的提言

プロジェクトリーダー:今井 猛嘉
年度:2022年, プロジェクトナンバー:2202A

背景と目的

自動運転車の社会実装が間近に迫り、自動運転車に対する期待と共に 喫緊の課題も明らかになりつつある。それは、①自動運転車の安全走行 (自動運転車相互、自動運転車対歩行者、自転車等)を担保する道 路及び都市の整備、②自動運転車が経済に及ぼす影響の評価(事故 数、死亡・負傷者数の減少という積極的効果、タクシー等の需要減少に 見られる消極的効果)、③レベル 3 以上で走行する車両の乗員に求めら れる健康状態や当該車両が乗員に及ぼす健康被害等の予測、④不可 避的に生じる自動運転車に係る事故への対処(特定人を非難し責任追 及するのか、事故原因解明を優先し同種事故防止を重視するのか等)、 ⑤以上の問題への解答の法整備化である。①は工学、②は経済学、③ は医学、④は社会学、倫理学、心理学、哲学、⑤は法学の基本問題に 直結する。そこで各専門的知見を踏まえた研究をし、その成果を国内外の 政策担当者に提示することを目指す。

期待される成果

過疎化、高齢化が進む地域では、住民の公共交通としての自動運 転車に優先道路を設定し、レベル 3 又は 4 での(死亡事故を回 避できる低速での)走行を許可する。その際、住民の合意形成を 確実にする措置(協調型インフラ基盤整備、器機故障や物損事 故に急行できる人員の配置、警察、消防との連携等に係る合意形 成等)の実施方法を講じる。 ② 自動運転車の便益(事故数、死傷者数の減少、交通弱者への 移動手段の提供等)と損失(タクシーや物流事業従事者の失 業、事故責任主体の不明確化等)に注目し、最適損失分岐点を 推定し、産業構造の変容に対処可能にする。 ③ レベル 3 の乗員は、突然の take over request 後、運転者にな るため、通常の運転者より高い緊張状態に置かれる。その際の運転 適性を維持しうる条件(医学的、法学的条件等)を検討する。レ ベル 3 以上の車両が故障又は事故に遭遇した場合、負傷等した 乗員の救助を容易にするシステムを、乗員のプライバシー保護を踏 まえつつ提案する。 ④ 自動運転中の死傷事故では(乗員は運転責任を負わないが)誰 かに非難が向けられるのか、責任追及に替えて事故原因解明によ る将来の事故防止を追求すべきか、Web 調査を通じて社会意識 を分析しつつ、両説の併用可能性を検討する。 ⑤ 以上の提案の鍵となる運転者及び乗員の概念、権利・義務を整 理し、運転者が乗車していなくても走る車に適した法制度(自動 運転車に固有の法律案)を提案する。

成果物

同テーマの研究調査

一覧へ戻る