award
第44回 令和4年度(2022年)
業績題目
除雪の力で滑走路を守る ―雪とたたかう人々の技術の伝承―
受賞者
北海道エアポート株式会社、地崎道路株式会社 北海道支店
受賞理由
交通インフラの運営者の責務は、通年にわたって滞りなく交通サービスを提供することにあります。わが国の冬期における除雪や融雪といった雪への対応は必須であり、経営的観点から見れば、コスト部門でもあります。
新千歳空港は国が設置、管理する空港だったのですが、北海道にある他の6つの空港とともに民営化され、2020年6月から北海道エアポート株式会社(HAP)が運営しています。新型コロナ感染の拡大により航空旅客は急減したものの、それに先立つ2019年には、国内、国際あわせて2,460万人が利用していました。乗降客数は全国第5位で、1日の旅客は67,000人、飛行機は400機にものぼります。
同時に、この空港は北海道のゲートウェイとなる広大な空港です。除雪面積は275ヘクタールにおよびます。これを支えるのがHAPの管理する除雪のための施設や設備であり、除雪事業を受託する地崎道路株式会社の「除雪部隊」でもあります。
滑走路の除雪には除雪機材が必要で、なかには、わが国唯一の巨大な機材もあります。空港には貯雪ピットがあり、ここには冬季の雪が蓄積され、熱変換された雪は、夏になると冷房用電源として使用されます。そして、HAPは航空会社とともに、国際ルールにもとづいて航空機の雪や氷を取り除く作業も行い、航空機が滑走路を安全に利用できるように努力を重ねています。除雪作業を請け負う地崎道路株式会社の除雪部隊メンバーは、およそ200名から構成されています。
そのうちの6~7割が空港近郊の農業従事者でもあり、除雪は彼らにとって農閑期の作業となります。しかし、機材を使いこなす作業員は一朝一夕に育成できるものではありません。まず、作業員は18~20名から成るチームに分かれ、各チームの中で交流を深めながら、経験豊富な作業員から時間をかけて技術が伝承されていきます。活動は冬期であるものの、一年を通して除雪作業に関する教育やコミュニケーションが図られています。なぜなら、自然を相手にする除雪には一度も同じ除雪はなく、1回の作業に要する時間も多様であり、雪の状況に応じた除雪が計画されなければならないからです。降雪状況、雪質などを短時間で判断し、除雪の時間、回数および方法が決められるのです。何よりも、飛行機の定時運航を確保することが前提となるため、時間との闘いとなります。
除雪部隊のメンバーは「当たり前のように航空機が離発着している状態」を見て達成感を味わい、空港利用者が「何事もなく飛行機を利用できる日常があること」に誇りを抱いています。しかし、課題もあります。増え続けるインバウンド旅客とは対照的に、空港現場の労働者の不足は顕著になっており、除雪作業もその例外ではありません。技術の伝承とともに、省力化、自動化のための実証実験や、雪質の分析の高度化といった資本代替策も研究されています。
雪からインフラの安全を守る仕事に従事される2社の活動を評価いたしました。