award
第45回 令和5年度(2023年)
論文表題
Evaluation of risk factors for road accidents under mixed traffic: Case study on Indian highways
受賞者
Sujata Basu, Pritam Saha
受賞理由
新興国では経済成長に伴い自動車交通量が急増しており、それに伴い交通事故も大きな社会問題となっています。交通事故の原因の分析については、すでに数多くの研究が蓄積していますが、本研究が対象とするインドのWest Bengal州の高速道路は、整備水準や交通状況が多様であり、先進国を対象とする既往研究では考慮されてこなかった交通事故のリスク要因も存在していると考えられます。
本研究は、対象地域の13区間について周辺土地利用や路面状況、交通状況等の多面的な道路の特徴を調査し、事故データと関連付けて分析することで、影響要因を把握することを試みています。
具体的には、「道路要因」として、歩道、路肩、交差点数、レーン数、「車両要因」として、関係する車両のタイプ、加減速の特徴、ブレーキ性能、「人的要因」として、眠気や疲労、飲酒、薬物、年齢、病気、心理的ストレス、強迫観念、「外的要因」として、気象条件、夜間の見通しを取り上げています。
これらの要因について、まずは単純集計により交通状況を示し、路肩の状況および歩道の状況と交通事故発生状況の関係を整理しています。次に、交通量と路肩・歩道の状況別に事故件数の分布をポアソン分布と仮定してパラメータを求め、それらの要因が交通事故に与える影響を分析しています。
また、交差点数と事故数の関係、調査区間別・移動手段別の事故発生頻度、レーン数別の交通事故の発生状況、時間帯別の事故発生状況、などを示しています。
その結果、mid block access、歩道と路肩状況、車両や運転の状況、時刻、レーン数などが交通事故の発生に影響すると結論付けています。事故の発生状況についてはポアソン分布を用いパラメータ化しており、定量的な分析がされています。一方、交通事故リスクについては記述統計による定性的な評価にとどまっていますが、混合交通下におけるリスク要因の把握を試みています。インドという交通事故データの整備が十分ではない地域において、実地調査に基づきデータを収集し、事故リスクの定量的な把握まで行った点で研究の努力が認められます。途上国では、モータリゼーションの進展に伴い交通事故リスクが急増しており、そうした社会的課題への対応という重要な問題に対して実直なデータ収集、分析を行っており、途上国で参照しうる知見が提供されていると考えられるため、優れた論文であると高く評価いたしました。